もう夏かと思わせるような陽気の中、仕事の帰りに東京芸大美術館陳列館へ。「Architecture as Ecopolitics 地政学的リアリズムに基づく設計思想の再編」という展覧会を見てきた。出展作家には芸大の研究室でお世話になった故・黒川哲郎先生の名前もあって、実は直前に奥様からお知らせをいただいて展覧会の情報を知った。その他15名ほどが参加しているものの、会期は10日間ほどの小規模な展覧会だ。
企画は芸大准教授の藤村龍至氏とその研究室が行っているようで、タイトルの「Ecopolitics」という言葉には資源やエネルギーの他気候変動や環境問題といった意味も含まれ、建築における課題をより社会的・政治的なものとして捉えた事例が並ぶ。くしくも中東情勢危機によって石油や輸入に頼りきった建築業界の現状を見直すにはタイムリーな企画で、新しい思想や取り組みといったものよりは、以前からの活動が今こそ見直されるべきだという観点で興味深いものばかりだ。
黒川先生の展示は「スケルトンログ構法」の思想と実例の紹介で、計画当時の木造架構模型が並ぶ。スギやヒノキといった製材は強度のばらつきや変形のしやすさからプレカットなどの流通材としては不向きだが、国産材でかつ極力丸太の状態で金物と組み合わせて使用することでデメリットを補った大スパン架構をつくっている。1本1本は無骨で荒々しくも、組み合わさることで美しく迫力のあるデザインを実現している。地球規模での温暖化という問題への対応として、また日本の林業を守り地域に根ざした活動として、その思考の先見性に驚くと同時に重要性は益々高まっているのではないだろうか。
横には今年始めに亡くなられた葉祥栄氏のコーナーと、大学の後輩にあたる伊藤暁くんのコーナーが面しているのが印象的だった。前者は小国町体育館という氏の代表作の展示で、小径の地元小国杉をトラス状に組んで実現した大規模で軽快な立体ドームである。かたや後者は同じく地域材を掘立丸太柱として用いた迫力がありつつも軽快な建築を紹介している。どちらも黒川先生の取り組みとのつながりを感じながら、先輩世代同士の表現の違いや、同世代の身近さからは刺激をもらうことができる。
その他印象的だったのは土による建築や、インフィルを再利用するリフォーム建築、廃墟再生の取り組みなど。塚本由晴氏による里山での自給自足の活動は建築の本来あるべき方向性を思わせる。
現在、石油という資源にこんなにも依存し過ぎているのかという事実を根本から突きつけられている建築界である。ホルムズ海峡封鎖によるこの混乱ぶりと立ち行かなさは、そのリスクと脆さを痛感して建築の設計や工事あるいはシステムのあり方を再考させるには十分過ぎる。戦争とその影響による石油や建材の不足は不幸だが、結果として現状を見直し本来のあり方を模索するのだとしたらよい機会なのかもしれない。
久しぶりに訪れた上野はJRの駅が様変わりしていて人が多くびっくりした。第二の母校である校内に入るのもしばらくぶりだが、芸術の森である上野公園周辺はたまに来て刺激をもらいたい場所である。
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