今年の3月に新築・開業で移転した富士見台どうぶつ病院。隣接するビル1階テナントが移転前の病院で、当初引払う予定だったのを覆して急遽猫専用病院として生まれ変わった。先日はその内覧会が開催され、ちょっとした屋台も出して賑やかになりそうだというので、興味津々で様子を見に伺った。
生まれ変わったと言っても基本的な部分は元の病院の内装を維持して引き継がれ、新たにつくったのは保護された猫たちがくつろぐ「保護猫室」のみ。鋭角の曲面ガラスサッシを備える建物の角で、外から中がよく見える場所である。そこに猫が遊んで休んで人と接することもできるような場を大胆な造作でつくっている。
室の奥は「猫山エリア」と名付け、緩やかに連続させた棚板が上段に行くほどセットバックしている。基本的には猫の居場所だが、あるところでは人の腰掛けスペースや収納スペースとしても機能するエリアである。室の外周部は「キャットウォークエリア」と名付け、同じ奥行の棚板に規則的な穴が空けられている。猫が縦横無尽に動き回る様子がガラス越しによく見えるエリアである。
「ねこの森」という名の通り、森をイメージできるように天井には樹木柄のクロスが貼られている。内覧会では来客が順番に保護猫室に入ることもできて、すこぶる好評のようだった。交差点の信号待ちで窓越しにどうしても目に入ってしまう効果も十分で、道ゆく人たちも足を止めて猫たちに手を振っている。
新築した本院の駐車スペースではこの日はテントを張って飲み物や縁日メニューを提供。生ビールだって100円で飲める!3階ドッグカフェとも連携してのおもてなしで、ペット連れの人や興味を持った子どもたちも自然と集まっていた。病院の営業的な意味合いがメインかもしれないが、地域を活性化して元気付けるような社会貢献としての役割もかなり大きいのである。
ここの院長先生はとにかくアグレッシブに新しいことに挑戦している。開業5年で早々と病院を拡張するべく隣の土地を購入して病院を新築。建物内にドッグランを利用できるドッグカフェを併設しているのも新たな試みで、診療の待ち時間に利用できるのはもちろん、診療以外の目的で立ち寄る飼い主さんもいるらしい。ペット診療・ペットホテル・トリミングといったサービスにとどまらず、飼い主さんや地域の交流の場にもなっているのである。この計画に関わらせてもらって気づいたのは、自分のペットを連れて交流したい飼い主さんニーズはかなりあるということ。診療目的やはたまた散歩が目的ではなくても、ひとが集まってくる場作りが実現している。
今回はまた新たに猫を保護して譲渡するという橋渡しの役割を、ほとんどボランティア状態で始めるという。それも獣医師であれば皆さん経験しているだろう捨て猫や猫特有の伝染病といった問題に立ち会い、なにかできないかと行動に移した結果である。先生のまわりにはその熱意と行動力に共感した人たちが自然に集まってきて、今回のようなプチお祭りをにぎやかに実現している。大変なことも多かったしこれからも多いとは思うが、とにかく病院でありながらも楽しく元気をもらえる場なのである。今後もその活動が成功することを祈り、応援やサポートをしていきたいと思う。
今回のお祝いはリサ・ラーソンの猫:マイです。
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