ギャラリー間で開催中の展覧会「篠原一男 空間に永遠を刻む」へ立ち寄る。
平日のギャラ間の割に人が多いと思ったら15分後にギャラリーツアーがあるというグッドタイミング。専属ディレクターの方の解説で色々と興味深い話もを聞くことができた。
篠原一男といえば東工大だが、我々世代が学生の頃はすでに学校を離れその弟子たちが活躍していて、もはや伝説的な巨匠建築家という存在だった。現在活躍する大御所を何人も輩出していてその意志を継ぐ建築家は多い。今年はちょうど生誕百年ということらしく、ギャラ間といえば新進気鋭の若手を取り上げることがお決まりだったが、すでに亡くなった建築家を取り上げる初の試みになったそうだ。
最初のフロアでは主に3つの住宅を取り上げていて、壁面の大きな写真と中央の貴重な原図が印象的な展示となっている。どれも業界では有名な初期1960年代の住宅だが、共通するのは近年移設や再建を経て継承されているという点である。新たな写真は竣工当時と同じアングルで再現しているのもまた面白い。
これらの住宅は正方形を基本に傘型の方形屋根というものすごくシンプルで、かつ少ない要素と操作で驚くほどの効果と印象をもたらす強さを備える。それがまさに展覧会のテーマとなっている「空間に永遠を刻む」を体現している。
篠原一男は「住宅は芸術である」と言ったらしい。これは最近なかなか言えないから、断言されるとドキッとしてしまう言葉だ。普段自分が口にする「住まい手と一緒につくり上げる」とか「将来的な変化を受け入れる柔軟性」といった決まり文句とは対極にあって、そんな弱々しい思考で言い訳するなと言われているような気がする。
中庭には100年に倣って「100の問い」が壁面に散りばめられていてどれも胸に刺さるものばかり。上階には初期とは違って幾何学を組み合わせた住宅のモックアップと、晩年に大量に書いたスケッチを見ることができる。
篠原一男の「芸術」は、なにか新しさや発明的な試みとは違う、とても現実的で素直な表現だ。そういう「永遠性」という強さを持った芸術だからこそ引き継がれ残されていくのだと、60年以上経て証明されている。
正直ここまで篠原住宅をじっくり見たことはなかったので、あらためてその力強さに圧倒されてしまった。
果たして自分のつくった住宅が世代を超えて持ち主を変えてなお残っていくものとなるのかどうか。
考えさせられる展覧会であった。
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