国立新美術館での展覧会「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」へ。
20世紀の住宅設計における革新的なチャレンジを、いくつかの観点からあらためて検証して紹介する企画。一般的な展覧会における図面と模型と写真とスケッチに加え、素材や家具や小物にいたるまで様々な媒体で各プロジェクトの特徴を補強している。14の事例が紹介されていたが、建築を学んだ頃から当たり前のように知っているものと、初めて具体的に知ったというものと、半々くらいだった印象。実物を見たことがあるものはなかったので、知っているものでも今回の展示で掘り下げられて新たな発見をしたものもあった。
展示エリアへのアプローチでは正面壁に横長の切り抜きがあって、一見普通なのに「窓」という先入観がそこにガラスや鏡の存在を想像したり、内と外の関係を作り出してしまっていて面白い。メインの展示スペースは大きな一室空間の中に14作品の展示エリアがバラバラに配置されているといった構成。正規のルートがないので自由に歩き回り、気になるところや空いているところに寄っていき、さらには同じ展示だけど違う角度から見るなんてことにもなる。所々に設計者に関連するビンテージの有名チェアが置いてあって、それだけでも楽しい。
印象に残ったのはまずミースのトゥーゲンハット邸。ガラス戸が電動で壁の中に降りていくことを知らなかったのだが、ミースがこのようなからくりを考案して仕掛けるような人だとは思っていなかった。ミニマムな思想の裏に並々ならぬ努力が潜んでいることにあらためて恐れ入る。
カーンのフィッシャー邸における窓のモックアップは、様々な機能を持ち合わせた立体としての窓を体験するという貴重な機会だった。
広瀬さんのSH-1もまた極限に細い鉄骨で組まれた原寸の空間を体験することができた。一見すると展示用の仮説に見えてしまうが、のちの軽量鉄骨造への道を切り開いた技術と、なによりその美しさとチャレンジ精神に圧倒される。
菊竹さんのスカイハウスは超有名だが、ここまで詳細に模型や図面やスケッチを見たことがなかった。その思想や竣工後の変化などもあらためて確認し、なんと30歳のときの設計と聞いておののく。
出口付近のゲーリーによる自邸は、有名なワンカット写真くらいでしか認識していなかったので、模型で全体像を把握できて楽しい。完成しないバラック感はゲーリーの原点とも言えて見ていて楽しい。
上階の企画展示室ではミースの未完のプロジェクトが原寸大で再現されて体験できる。ミースの研ぎ澄まされた空間が室内と一体になる中庭に開いており、オープンでミニマムなデザインの良さをより一層引き立たせている。中庭を照らす照明の色が刻々と変化して、時の流れまで感じられる素敵な演出である。
総じて何十年も前の有名住宅設計ではあるものの、当時のチャレンジ精神と後世への影響をあらためて確認できるよい展覧会だった。なにかと守りに入りつつある自身を省みる良い機会にもなったことは言うまでもない。
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