狭小住宅の工夫 その2「ロフトをつくる」

その1をやりっ放しにして結構時間が経ってしまった・・・。狭小住宅を設計する際の工夫 その2は「ロフトをつくる」。
「ロフト」は建築基準法的には「小屋裏物置」と定義されていて、その名の通り小屋裏を物置きなどとして有効に使うことが目的の場所である。そこは階や床面積にカウントされないがゆえに、建物の規模に関する規制を逃れることができる。その扱いの前提で主なものは「床面積がその階の1/2未満」「最高の高さが1.4m以下」といった条件である。それ以外にも自治体によって「階段は可動のはしご」「開口部は最低限(外に出られないもの)」「横から入るのは認めない」などといった条件が整備されている。ここで一貫している方向性は”居心地のよい場所にしてはダメ”ということだろう。

しかし、居心地がよいかどうかは個人差があって「小屋裏物置」という定義自体がすでに人によっては居心地良い空間にもなり得てしまう。例えば、天井が低い場所や下階から離れている場所は落ち着いて好きという人もいるだろうし、子供にとっては秘密基地的な冒険心をくすぐったり、そもそも体のスケールにフィットした場所なのである。あるいは空が近くて気持ちいいとか見晴らしが良いとか、高い場所としての魅力もあるだろう。
そういう法律の趣旨と違う方向性というのをあまり声を大にして主張したくもないけれども、それらが認められていることもまた現実。それらを「ロフト」と呼ぶことにして、狭小住宅ではそういったロフト自体の有効性、あるいはロフトがあることによってそれ以外の場所の居心地が良くなることをあてにすることが多い。

「堀ノ内の住宅」は限られた面積の変形敷地であった上に、「43条ただし書き道路」という様々な規制の掛かる道路に面していた。最大限の床を確保することに加え、ボリュームとしても規制の中で作れる最大限の形を導いたところ、急勾配で細長い屋根が載ることに。そこで考えたのが、この余剰空間とも言える小屋 裏のスペースの活用方法で、少しでも床を増やしておこうという目的で中央に床を設けたのだが、同時に2階の各スペースをつなげるような役割を果たして、限られた空間が開放的に感じられる。住まい手の二人の小さなお子さんのためのプレイルームのような役割を果たし、そこは常に家族の目が行き届いて家全体をつなぐ役割をしている。天窓を設けて空を眺め、そばの川を見下ろせることもまた魅力的な要素のひとつだろう。

「東大泉の住宅」では、2階のLDKに面して、窓付きのロフトを設けた。物置としての機能はもちろんだが、子供にとっては隠れ家のような場所であり、窓を開けて下階の家族に手を振る様子が想像できる。同じく換気用に設けた天窓が、天井の高いLDKの暖気を排出する煙突のような働きをして、家全体の風通しを良くしている。
狭小住宅で少しでも床を増やそうとアプローチしたロフトではあるが、いまや単なる床面積としてではなく、それ以上の効果を生み出すための大切な要素になっていると思う。

2018/06/30