クレマチスの丘の後は最終目的である富士宮の富士山世界遺産センターへ。昨年末にオープンした世界文化遺産としての富士山を伝える建築。なみいる猛者をおさえてコンペを勝ち獲った坂茂氏の設計である。当日は坂事務所に所属する大学時代の友人菅井くんに案内してもらった。大きな鳥居の横から建物まで続く水盤に逆さ富士の三角錐が突き刺さるように浮かび、坂さん得意の木のメッシュで覆われている。
逆三角錐はガラスのボックスに貫入したような構成で、内部はらせん状に下から上に向かってスロープが続く展示室になっている。真っ暗な空間に富士山関連の映像が映し出され、所々で実際に富士山を登ったときの風景を見ることで登山の疑似体験ができる。最上階では明るくなったと思ったら目の前の大開口を通して本物の富士山がお目見え。粋な演出である。当日は晴れ晴れとまではいかないけれど、おおよその富士山の姿を確認できてよかった。
デザイン的なメインである木のメッシュは構造とは関係なくて、外側に張り巡らされた装飾である。それにしても逆三角錐とその上に張り出した屋根がバランスして建つような姿は、そこにある種の緊張感をもたらしている。水盤に映る三角錐が富士山に見える様子を見たかったけど、少しの風でも水面は揺れてしまって、きれいに見える瞬間はなかなかないかもしれない。
そして当たり前かもしれないけど、やっぱり主役は富士山であって、それを引き立てるための建築になっているのはとても良かった。富士山に登りたくなった、のもまたこの建築の成功だろうと思う。
菅井くんには通常見られないバックヤードの方まで案内してもらい感謝。帰りはオススメのさわやかというハンバーグ屋さんに行こうと思ったのに、ものすごい混みようで断念。またいつか。
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