ル・コルビュジエ 絵画から建築へ ピュリスムの時代

先日会期を終えた「ル・コルビュジエ展」について。
学生時代に一度行ったきりだった国立西洋美術館をあらためてじっくり見る機会になった。
日本に存在するコルビュジエ唯一の建築だが、社会人となって実務を経験してから見るとまた違って見える。
簡単に言うと「こんなに良かったのか」という感想になるが、学生時代はなにか過激で分かりやすい表現や思想に憧れてしまって、歴史的な意義やしみじみした良さに鈍感になっていたと痛感させられることが最近やけに多いのだ。

連続する展示空間は、天井高の違いや光の取り込み方で様々な鑑賞空間を作り出している。時代毎の絵画と建築を見てその時代背景なんかを想像して体験することが、そのままコルビュジエの建築そのものを体験することになっている。そう気付いたときにはなにかぞっとするような気さえするくらい。この国立西洋美術館だからこそできたことなのである。

建築に関するスケッチや図面や模型といったものは特に目新しいものではないから、「そうそう」「これこれ」って感じで見てしまうんだけど、ピュリスムの絵画についてはとても興味深かった。静物の重なりと透明感と奥行きの表現が建築の発送の源になっているというのは妙に説得力があって、そういう方から見てみると今まで見てきた建築達もまた違う意味を持つようだった。絵画の中に建築が見えてくるような感覚。相棒であるオザンファンの作品とともに、画家としてのコルビュジエはなくてはならないものだったのだろう。どっぷりとコルビュジエに漬かれる贅沢な展覧会だった。

2019/05/27