パナソニック汐留美術館で開催中の「ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム」へ。
ミッドセンチュリーのデンマークを代表する家具デザイナー。しかしぼくは知りませんでした、こんなすごい人がいたことを。北欧家具といえばハンス・J・ワグナーやアルネ・ヤコブセンといった人がそれぞれ有名な椅子とセットで頭に浮かぶ。同時代でしかもデンマークという故郷もぴったり一致しているのに、どうしてケアホルムを知らないのだろう。
北欧家具と言えば木製の温かみのあるデザインを思い浮かべるが、ケアホルムが追い求めたのは様々な素材を用いた研ぎ澄まされててシャープなデザインだ。特に注目したいのは鉄の扱いで、有名な北欧家具が成型合板などの木部に注目されるのに比べて、圧倒的に鉄の性質を十分に活かしてかっこよくデザインされている。シンプルに見えて、むしろそのためものすごく手間と時間が掛かっていることや、ケアホルムの細部へのこだわりが伝わってくる。量産化の提案があってもなかなか話が進まなかったのも分かる気がする。ものづくりってこうだよな。
会場では織田さんという椅子研究家のコレクションをメインに多くの代表作を見ることができる。成型合板の北欧家具として見慣れたものもあるが、目が行くのはむしろ素材やデザインの多彩さだと思う。それは木、鉄、皮、籐、石、アルミ、ガラス、などかなり多岐に渡っているし、それぞれに違ったディテールのこだわりも見られる。共通しているのはやはりこれで保つのだろうかというミニマムさと緊張感。座った人の荷重と相まって安定するという考え方もよく考えられている。
最後のコーナーでは絵画を干渉する体でいくつかの椅子に直接座って体験できる。実際に触って座るという行為自体がうれしいし、大変貴重な機会である。どれもデザイン優先というわけではなく座り心地までよいことが確認できて唸らされる。三本脚の椅子はアリンコチェア3本脚と違って非常に安定していたなあ。
しかし欲しいと思ってもなかなか手が出ない価格にまたまた唸らされるのであった。
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