田園調布の家09

田園調布の家は3月頭には竣工引渡しとなった。最後は検査と手直しと取説などが相次ぎ、引渡しの日に引越しという余裕のない日程となってしまった。引き続き残工事があって落ち着かないが、なんとか最低限のところまでは終えることができてホッとしている。照明器具が遅れていたり屋上デッキが貼られていないなど、竣工写真としても体をなさないものではあるが、工事記録写真として撮ったものを数枚アップしておこう。

こうして写真にしてみると天井板張りのものが絵になる。法的に内装で構造体の木材を現しにはできないところを、最後の仕上げに余分に貼り上げて仕上げるわけだがその効果は大きいと思う。勾配天井はラワン合板を使って家具と調和し、リビングではレッドシダーの羽目板でまた少し特別感がある。こちらの提案とそれを理解し優先していただいて建主には感謝である。

思えばお話を頂いたときにはコロナ禍真っ只中で、世間的には不安な空気が蔓延していたと記憶している。物価高騰・物流停滞・人手不足という影響をまともに受けた苦しい現場だった。後で聞いたが追い込み時期に複数の職人さんに体調不良が出たらしく、本当にギリギリ綱渡りの工程だったようだ。予算組みと工事延期で建主には大変ご迷惑をお掛けしたが、最後に喜んでもらえて少しでも救われる思いがする。

さっそくご自身で厳選したという大きなソファやダイニングテーブルが運び込まれていた。今回の設計は自分には珍しくしっかりと仕切られた子供室が3つあるが、籠もってしまうのも寂しいので広めの共用スペースを設けている。またこの家で一番見晴らしの良いルーフバルコニーにはデッキスペースをはじめちょっとした居場所が用意してある。そのあたりが今後どのように使われていくかはとても楽しみだ。

残工事が落ち着いて生活感の出てきた頃、あらためて竣工写真として撮影させてもらうのも楽しみにしようと思う。

2023/03/28