住宅の設計でも狭小住宅の問い合わせが結構あるので、今までの事例を元に限られた面積を有効に使ったり広く感じさせる工夫を紹介したい。
その1は「地階の利用」。住宅における地階は全体の床面積の1/3までは容積率対象の床面積にカウントしなくてよい。つまり単純に各階が同じ面積の住宅の場合、地上2階・地下1階ならば、地下はまるまる容積率の面積から除外してもらえる。
そこでおさえておかないといけないのは、1.住宅であること、2.地階であること、3.地盤面から地階の天井までが1m以下であること。1はいいとして、2 はちゃんと定義があって「床が地盤面よりも下にあって、床面から地盤面までの高さが天井高の1/3以上の階」となっている。つまり完全に埋まらなくていいけど3/1以上埋まってるのが「地階」だということ。そして3で、天井が地上よりも1m以上出ない、ことを容積率緩和の条件としている。
地階にすると土地に接する部分は鉄筋コンクリート造になり、掘削やコンクリート工事で工事費が割高になるのは否めない。あとは防水処理や断熱・結露対策が必須にもなってくるけれども、限られた面積で容積率の緩和を1/3も得られるのは大きい。
「北烏山の住宅」は第一種低層住居専用地域の狭小地で建蔽率/容積率が40%/80%という制限に加え、厳しい斜線制限が課せられた。建蔽率マックスの5.58m角正方形で1,2階平面を構成し、同じ平面の地階をまるまる容積率の対象外としている。地階の天井高は2.23m、地盤面から地階の天井まではちょうど1m。その1mの外壁部分にたくさんの窓を設け、ハイサイドの窓として地階の室全体を明るくしている。地面に近い窓なので、草木や道行く人の足が 見えたりして通常の窓とは違う景色を取り込めるのはおもしろい。外壁は全体的にもたくさんの窓を散りばめて開放的にしているが、各階が通常よりも半階分ズレているので、隣家の窓と相対しないでプライバシーが確保されている。
コンクリートの壁は万が一の漏水などに備えて外側で断熱をして内側は打放しがよいだろう。熱容量が高いので、夏はひんやり涼しくなる。冬場はうまく暖房しないといけないけれど、コンクリートに蓄熱して「常に暖かい」環境は作りやすい。狭小住宅では有効な手段なのである。
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