狭小住宅の工夫 その4「仕切らない」

狭小住宅を設計する際の工夫 その1〜3はこちらから。
今回その4は「仕切らない」ことである。
思えば住宅のデビュー作からずっと、この「仕切らない」ことは大事にしてきたと思う。「越谷の住宅」では可動家具を動かすことによって、「松阪の住宅」では続き間の天井高を変えることによって、「久居の住宅」では斜め壁で死角をつくることによって、「貫井北町の住宅」では床のレベルを変えることによって、それぞれ仕切らずとも場所として分節する住まい方を提案してきた。それは主に将来的に変化するであろう家族形態や住まい方に対して柔軟に対応できることが目的のひとつであった。が、もうひとつ、仕切らないこと=つながることによる広がりや空間の抜けは、限られた面積の狭小住宅では有効な要素となる。

「堀ノ内の住宅」では、細長い木造では特に必要となる短辺方向の耐力壁を、完全に仕切らずに空間を緩やかに分節する要素にとどめて配置している。上部のロフトまでがこの緩やかな分節に加わって、家全体を見通せることで広がりを感じさせるものにもなっている。1階では玄関土間と寝室とを仕切らずに、必要な時だけカーテンで仕切って視線のコントロールができるようにした。

「北烏山の住宅」では、同じく木造で必要な耐力壁を十字型に交わる形で配置し、門型の架構であえて分節しつつ家全体をつないでいる。門型の下には4本引きの扉が自由に動き、その透明度の違いによっても場と場の間に様々な関係をつくることができる。「仕切らない」というよりは、微妙に仕切ることでたくさんの場所を生み出している、という感じか。

いずれにしても仕切ってしまうことの勿体なさやどうにも自由が効かない感じは、住まいに息苦しさを与える気がしている。もちろんプライバシーを要求されて場所同士の仕切りが必要な場合もあるのだが、上部を開けてつながるとか、空気だけ光だけ音だけがつながるとか、さらには外部とつながるとか。「仕切られていない」感はなんらかのかたちで提供したい。

2019/04/28