東部静岡 建築巡り ~クレマチスの丘

久しぶりにレンタカーを借りて建築巡りへ。最終目的地の富士宮へ行く前にどこに寄ろうかと思案して、沼津からちょっと北へ行ったところにあるクレマチスの丘へ。自然公園の中に美術館や文学館が点在するスポットで、その中でも目的は菊竹清訓氏設計の2つの建築、ベルナール・ビュフェ美術館と井上靖文学館である。
この2つの建築はともに1973年竣工の物件で、同じエリア内で相対するように建っている。45周年ということだから自分と同い年の建物。パッと見はそんな年の経過を思わせないが、良い意味で時代を感じさせるデザインだった。

ビュフェ美術館は円弧を描く導入部と、中央の三角柱の白いかたまりが印象的。大胆なボリューム操作の割に、内部はそれを感じさせない平面計画だった。2000点の絵画とともにビュフェの美術館がこの日本にあるということ自体驚きなのだが、時代やテーマに沿って間近で鑑賞できる空間体験は心地のよい。チラチラと窓から見える緑や敷地の高低差を活用した構成が自然との調和も感じさせる。ビュフェの力強い黒の輪郭線と、建築の白いかたまりに引かれた黒いサッシの線が、なんとなく共鳴しているなあと、勝手に感じていた。

井上靖文学館は和をコンクリートで表現したような、いかにも菊竹さんらしいデザイン。こうして目の前で見ると、様式と質感のアンバランスさが意思と迫力を持って迫ってくる。今やる人はいないだろうなと思いながらも、時の流れと当時の力強さを感じて圧倒されるのである。内部はこれも力強いコンクリートの柱が棟木を支えるような構成・・・ではあるのだが、せっかくのコンクリートに板が張られたり壁で見えなくなっていたりしたのは残念。受付の人には「建築はデザインがよいから使いやすいってもんじゃないんだっ」と言われて説教された気分に・・・耳が痛い・・・。

2018/03/05