狭小住宅を設計する際の工夫 その3は「出窓の活用」。
出窓は床面積に算入されない。となるとここでもやっぱり定義の話をする必要がある。「出窓」の定義は、床面からの高さが30cm以上、外壁からの出っ張りが50cm未満、そして見付面積の半分以上が窓、ということになっている。さらには、出窓の下部が全部収納だったり、出窓の天井位置によっては認められないから、都度細かい注意は必要である。これらの条件を満たすと外壁という扱いにならず、建築面積にも算入されない。
「東大泉の住宅」はサブタイトルでも言及しているが、外観からしてほとんど「出窓の家」。2階のリビングとダイニングに横長の出窓を連続させている。この窓台部分は少し室内側にも出っ張らせて、奥行きのあるテーブルとして使ったり、場所によっては収納として使っている。特別ではないけれども出窓の有効な使い方の一例である。2階全体が持ち出している外観に対して、さらに出窓を持ち出すという構成がこの家の特徴にもなった。
「堀ノ内の住宅」の方は狭小という意味ではもっと切実である。敷地境界線から外壁までを50cm離すという規制が掛かったため、ほぼ敷地境界線まで50cm出っ張ったバルコニーの床を30cm以上上げることで出窓と同じ扱いとなった。外から見ると出窓ということで外壁後退の対象から除外してもらったのだ。50cmのバルコニーというととても小さいが、実際には床から45cm上げて室内側の同じ高さにベンチをつくり、窓を開けたときに大きなバルコニーになるという仕掛けをつくっている。部屋全体が外へ飛び出したような構成で、限られたスペースを少しでも広く感じさせる工夫である。
出窓というとたぶん一般的には台形の既製品で、ふりふりレースのカーテンが似合いそうなものをイメージする人が多いかもしれないけれど、こうして定義を単に読み込んで純粋な寸法や構成要素で捉え直してみると可能性は広がる。出窓に限らず言葉のイメージで頭を固くしないようにしたいものである。
Copyright (c) MIZUISHI Architect Atelier All Rights Reserved.