狭小住宅の工夫 その5「レースで隠す・仕切る」

狭小住宅を設計する際の工夫、その4は「レースで隠す・仕切る」。
レースのカーテンを使用した事例は結構多い。
最初は「花小金井の改修」だった。壁面の収納や物置きスペースをレースカーテンで覆って、埃除けの機能性とともに室同士をつないで一体感をつくりだした。カーテンは二重になっているので、所々で透明度の調整も可能だ。

「タオメンタルクリニック」ではファサードの全面ガラス内側に模様入りのレースカーテンを設置している。開放的でありつつもプライバシーに配慮しているのだが、上部の間接照明の光はレースによって広がり、全体を均一に明るくしている。

「貫井北町の住宅」では建物両サイドにある奥行き60cmのフトコロ部分にカーテンレールを一本通してレースカーテンを掛けている。カーテンを開けたり閉めたりすることで、ものを隠したり居室とつながったりと様々な関係をつくりだすことができる。

レースの特徴をまとめてみたい。
ひとつには「透ける」ということ。「透ける」度合いも様々ではあるが、近づくと向こう側が見えるとか、こちらより向こうが明るいとよく見えるとか、状況によって透明度が変わるのもその特徴だ。隠したり仕切ったりしていても、なんとなく透明感があることで閉鎖感や断絶感を和らげてくれる効果がある。
もう一つは物質的な「柔らかさ」である。レースと言うよりはカーテンとしての特徴だが、風でひらひらとたなびいたり、ヒダが連続して波をつくる様子は軽やかで柔らかな印象を与えるし、なにより実際に触ったときに柔らかい。
さらにもう一つはこれもカーテンとしての特徴だが「開閉のしやすさ」。片手でサッと開いたり閉じたりが可能ということ。扉の開閉とは違って、より大きな面積での開閉行為が可能なカーテンは、あたかも壁自体を出現させたり消失させたりということができる。窓の前で見慣れたカーテンではなく、間仕切り壁として使う場合は、強固な壁に代わるより緩やかな仕切りとして期待できるのだ。

究極の狭小住宅と言われる「堀ノ内の住宅」ではレースのカーテンがその効果を最大限に発揮しているのではないかと思う。収納扉の代わりのレースカーテンは、扉でしっかり隠すのに比べて、壁や天井が透けて見えるので透明感と広がりが感じられる効果がある。そしてなにより物がはみ出しても覆い隠せてしまうという柔らかさの利点をも生かしているのだ。また玄関土間と寝室はレースカーテンで間仕切り、就寝時以外はオープンにして極力空間を区切らずに広がりを感じられるようにしている。この間仕切り横は階段下スペースに行く動線が狭すぎるのだが、カーテンが体に触れながら通ることで行き来を可能にしている。まさに柔らかさの利点を生かしているのである。

カーテンは通常本工事に含まれず、建築的な要素とか部材として認識されることは少ない。だがその特徴を考えると、特に狭小住宅などで積極的に使うことは有効だと思う。

もう一つ特徴を言い忘れた・・・。間仕切りや扉を作るよりも断然「安い」。これ重要だ。

2019/06/27